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山小屋のいちにち

北アルプス、大天井ヒュッテで働く夫妻を訪ねた。 
  • Photograph: Hinano Kimoto
  • Text: HERENESS

まだ暗いうちから仕事をはじめ、夜明けとともに登山者の安全を願い送り出す。そして、今日もまた新たに訪れる人たちを迎え入れ、憩いの場を提供する。北アルプスの大天井岳西方鞍部に位置する大天井ヒュッテには、自然に囲まれた山の暮らしがよく似合う夫妻が働いていた。

夏山シーズン、登山の楽しみ方はより豊かになる。難易度を上げた山に挑戦したり、時間を存分に使って距離を延ばしたりと、選択肢を広げてくれるのが山小屋だ。目的地までの途中で休憩や宿泊に利用するだけでなく、そこで出会った登山者同士、そして小屋を守る人たちとの交流も、貴重な旅の思い出となる。

北アルプスのなかでも人気の高いルート「表銀座」の中間点に位置するのが、〈大天井ヒュッテ〉だ。中房温泉からコースタイムで約6時間、ここから槍ヶ岳まで約7時間となり、2泊3日、もしくは3泊4日で槍ヶ岳登頂を目指すなら、一泊目の宿泊地としてちょうどいい場所にある。


しかし、ここまで辿り着くのも容易ではない。表銀座最初の分岐で、大天井岳山頂を横目に西側(直進)へ進んでトラバースルートを選ぶ。槍ヶ岳への最短ルートとなるのだが、鎖場や急斜面の難所がしつこく連続する。何度も繰り返すカーブを経て、ようやく見えた赤い屋根。長い緊張から解放される感覚は、山小屋が与えてくれる特別な安心感だ。


出迎えてくれたのは、大天井ヒュッテを運営する村田華さん。夫の壮さんと一緒に小屋番として働いている。


「遠かったですよね。お疲れ様でした。お茶を淹れますね」

小麦色に焼けた肌と柔らかな口調が印象的だ。27歳という若さで、2,650mの高所での務めを自然とこなす姿が頼もしい。厨房から出てきてくれた壮さんは、華さんと他2名のスタッフにとって、さらに心強い存在だ。大天井ヒュッテを運営する村田さん夫妻の一日を追うと、この小さな山小屋に居心地のよさを覚えていった。


山小屋のルーティンワーク

3:30起床。4時には仕事が始まっている。朝は弁当と朝食の準備だ。まだ暗い時間の厨房で作業を静かに進める様子から、身体に馴染んだ毎日の営みだとわかる。気温は15度前後。一年で最も気温が高い時期とはいえ、朝は冷える。


「作業がしやすいので厨房では基本的に半袖を着て、ベストを羽織るのがちょうどいいんです」と、壮さん。

5:00、朝食。この時間は刻々と外の景色が変化する。朝日が槍ヶ岳や穂高連峰を染め、徐々にその輪郭をはっきりさせていく。


「牛首展望台に登れる時間があったら、ぜひ。360度のパノラマは、絶景を独り占めできますよ」と、華さん。片道15分でアクセスできる牛首展望台からの景色は一見の価値ありだ。


6:00、スタッフ朝食。ひと仕事を終え、揃って食事をする。ここまでに宿泊者の朝食の後片付けや、簡単な館内清掃を手際良くこなしていた。食後はさらに館内と厨房に分かれて清掃をし、小休憩を挟む。


8:00、館内全体清掃。客室、トイレ、玄関ホールの清掃に加え、天気が良ければ布団を干す。掃除の徹底ぶりに驚くほどだ。ここに宿泊して感じた居心地のよさは、行き届いた清掃によるものだとわかった。




9:00、お茶の時間。スタッフの大原さんがチョコレートケーキを焼いてくれた。コーヒーと一緒にいただく程よい甘さのケーキが、疲れを癒してくれる。

「こそこそ何かやっていると思ったら」と笑顔の壮さん。大原さんは「この前、華さんにチョコレートケーキをリクエストされたので」と教えてくれた。

壮さんと大原さんの掛け合いは、和やかな空気を作り出す。2019年に壮さんが大天井ヒュッテの運営を前任者から引き継いで以来、毎年ここで一緒に働いている。(2020年はコロナ禍により休業)そして、松本さんは、今年参入した新メンバー。


「私は華さんが書く文章が好きで、小屋番の枠が空いたところに応募しました」(松本さん)

華さんの人柄が表れたコラムを読んで惚れ込み、一緒に働ける大天井ヒュッテに来たという。この山小屋に漂うあたたかな雰囲気はスタッフの互いに素敵な関係性によるものだ。

この後は2名ずつに分かれ、9:30〜12:00、昼食後〜15:00のシフト制となる。休憩に立ち寄る登山者にランチメニューをもてなしたり、午後は宿泊者のチェックインの対応をする。宿泊は予約制だが、予定通りとばかりにいかない山の中で、小屋の仕事はいつでも臨機応変さを求められる。

山の暮らし × HERENESS WOOL

朝夕の温度差が激しい環境下、常に動き続ける小屋番の仕事着として、HERENESSのWOOLアイテムは役目を果たしてくれているだろうか。休憩時間を利用しておふたりに話を伺った。

「Tシャツ〈DRY WOOL T-SHIRT(UNISEX)〉は温かみがあって、半袖でも長い間活躍しそうです。天然素材がもともと好きなので、肌触りの良さも気に入りました。パンツ〈SUGARCANE LONG PANTS(WOMEN)〉は驚くほど軽くて動きやすい。よく伸びるので、ストレスフリーでした。ポケットのファスナーも細やかで嬉しいポイントですね」(華さん)


「Tシャツ〈SMOOTH WOOL T‑SHIRT(UNISEX)〉は、仕事着としても気にせず使えそうです。洗濯も限られたタイミングになるので、防臭機能と耐久性があるのは嬉しいですね。シャツ&パンツのセットアップ〈MOUNTAIN WOOL SHIRT〉〈MOUNTAIN WOOL SHORTS〉はしっかり張り感がありながらも動きやすかった。お盆を過ぎると急に秋めいてくるので、これからシャツの出番が多くなりそうです」(壮さん)


HERENESSのWOOLアイテムが最もこだわった天然素材の着心地の良さを実感していた。また、ウールが持つ調温機能や防臭機能が山の暮らしの味方となり、アクティブシーンを想定したデザイン、ポリエステルの特性を活かした混紡繊維の採用も二人の動きをよくサポートした。


15:00、お茶をしてから、夕食準備。団体客の予約が入れば、夕食は2回に分けて提供する。また、明日の出発が早い宿泊者から注文を受ければ、ここで弁当も準備する。


17:00、夕食。メインは大天井ヒュッテの名物、とんかつだ。揚げたてのジューシーなとんかつは肉厚で柔らかくとても美味しい。間違いなく明日の山行の活力になる。


19:00、スタッフ夕食。辺りは真っ暗になり静まる頃、厨房に揃って団欒の時間。


20:00、消灯。翌日に向けてなるべく早く就寝するというが、「信じられないくらい星が綺麗な時があります。ここは街の明かりが一切届かないので、安曇野の街が見える場所と比べて一層綺麗なんです」と、華さんが大天井ヒュッテの夜の魅力を教えてくれた。

ルーティンワークの他にも、山小屋の仕事は多岐に渡る。たとえば、登山道整備もその範疇だ。草を刈ったり、崩れた箇所を修繕したり、営業期間中に毎年少しずつ近隣の登山道を維持している。また、月に数回、ヘリコプターで物資が届けられる。その日は普段通りにはいかないことも多く、来客の対応もしながらより忙しい一日となる。

里と山を行き来し 自然と共存する

大天井ヒュッテの小屋番をする傍ら、華さんはヨガウェアブランドで働き、壮さんは冬になると、スキー場のパトロールが生業となる。

「16歳の時、交換留学でオーストラリアへ行ったんですが、体育でヨガの授業がありました。授業の最後、シャバアーサナのポーズで天国に行っちゃったんです(笑)。その時、いつかヨガに関わる仕事がしたいなと思いました。その後、ファッションが好きだったので服飾の専門学校に行き、しばらく働いたあと、20代の初めの頃に「ヨガを仕事にしたかったんだ!」と思い出しました。今はサステナブルな素材で作るヨガウェアブランドの仕事をしています」(華さん)

「出身が富山なんですが、雪が降る土地で両親がやるスキーを自分もやるのは特別なことではなかった。一年の中にある遊びのひとつとして気づけば自然なことでした。パトロールの仕事を始めて、先輩たちがすごく上手に滑るのを見て、同じように楽しく滑りたいなと思ったのが、夢中になったきっかけですね」(壮さん)

身体を動かすことと、自然の中に身を置くことへの心地よさを共通点とした二人は、互いの専門分野を行き来して共有することもあるという。別の山小屋で出会い、そこで共に経験したことを活かしながら、大天井ヒュッテの取り組みにこだわりを持って暮らしている。

「ちょっとのことが積み重ねで変わるんじゃないかと信じて、ここではペットボトルの販売を減らしたり、できるだけリサイクルを心掛けていたりしていますね。そして、キャベツの芯ひとつをとっても、捨てる前にちょっと考える。無意識に下(街)でやってしまっていることがここでは直接自分たちに返ってきますから。ゴミを出さないように工夫することで、処理の手間が省け、環境にも繋がるといいなと思っています」(壮さん)

「ここに来てからは私たちが守るべき自然環境についてより考えるようになりました。お客様の考えにはなかったとしても、自ずとアクションに参加している小屋になったらいいなと思いながらやってるんですよね」(華さん)

ダイレクトに影響を与える山の環境について考え、工夫を凝らして自然と共存している。そんな暮らしに馴染んだ二人が待つ小さな山小屋の居心地のよさは、記憶に深く刻まれた。



【モデルサイズ】
村田 華さん(身長160cm)

・DRY WOOL T-SHIRT(UNISEX) HEATHER GRAY / XSサイズ
・SUGARCANE LONG PANTS(WOMEN) OLIVE GREEN / Sサイズ
・MODERATE HAT OLIVE GREEN / 1サイズ

村田 壮さん(身長180cm)

・SMOOTH WOOL T-SHIRT(UNISEX) DEEP RED / Lサイズ
・MOUNTAIN WOOL SHIRT BLACK / Lサイズ
・MOUNTAIN WOOL SHORTS BLACK / Lサイズ
※キャップ村田さん私物