つながりを取り戻す リトリート

夏の入り口、山の天候も落ち着いて初心者が登山を体験するには絶好の季節、八ヶ岳の美しい森に親しむリトリートが開催された。
  • Photograph:HERENESS
  • Text:HERENESS

分けてしまうと偏りが生まれる

「今回のテーマは〈つながり〉だったんです。MIKAちゃんも前回のHERENESS MAGAZINEで話していましたが、今はわかりやすいという理由で〈わたしとわたし以外〉、〈精神と体〉、〈自然と人間〉って切り離されていると思うんです。ただそうして分けてしまったらどちらかが偏ってしまうよねって思っていて、そこを全部つなげられるコンテンツにしたいなって」

こうした思いをかたちにしたのが、登山とヨガ、“書く瞑想”とも呼ばれるジャーナリングを組み合わせたリトリートだった。

場所は八ヶ岳、ルートは麦草峠から白駒池を抜けてニュウを登り人気の山小屋黒百合ヒュッテで一泊、翌日は天狗岳を登って渋の湯へ下るというもの。標高2,000mまでバスでアプローチできる麦草峠は、登山口としてはかなり高い地点にあるので初心者でも無理がない。それでいて白駒池周辺の苔むした森や、天狗岳の勇壮な風景も楽しめるよく考えられたコースだ。

歩き出してすぐの白駒池にて 右が主催者の佐和子さん

 

「登山で自然の中を歩く、それは人間と自然界をつなげる役割をしてくれる。ヨガは体と精神をつなげる役目がある。ジャーナリングは自分のことを集中して考える機会ですが、実際は自分と自分以外の人との関係性の中で個が形成されていくという気づきに繋がる。それぞれ3つをつなげるコンテンツになればよいと思って組み立てました」

登山経験の豊富なMIKAさんが皆をサポート
初日のピーク、ニュウを目指す
ニュウから白駒池をのぞむ

 

全体を見て整えていくことが大事

佐和子さんが企画したこのリトリートは、自身の体験に根ざしたものだ。MIKAさん同様、東京から山梨に拠点を移し、書くという仕事と生活を地続きのものにしようと試みている。
「出版社に勤め、健康やスポーツに関わる媒体で働いていたので、自分の体や精神のケアの方法や知識はものすごく身につきました。インタビューする方もヨガの先生だったり、食に詳しい方だったり、心地よく生きてる方が多かったんです。
一方で自分を振り返ってみると、とても忙しい中で体調を崩すこともありました。人間関係もハッピーだったし、忙しい以外で悩みはなかったんです。でもふと時間をおいて自分の中に何があるかな、何を大切にしたいかなと思った時に、もう少し自分の環境を大切にしたいという気持ちに素直になってみてもいいかなって。
いまは何もしないでいるとデジタル世界にひたるとか数字やアルゴリズムにコントロールされるのがあたりまえになってくる。もう少しそこに自分の身体性を伴う行動を増やしていきたい。それはいまやっている畑もそうですし、すぐに山にアクセスできる環境もそうですし、運動もそうです。自分の内臓の感覚とかそういうものを指針にして生きていくスキルを身に付けたいなと思ったのが、移住の大きなきっかけです」

 

自然とつながり ひととつながる

こうした思いに共感して集まった参加者は20代〜40代、性別も国籍も様々な20名ほど。雄大な自然の中で体を動かすことで、心も自ずと開いていく。

 

「思ったよりもひとりで参加してくれた方が多かったんですが、みなさん分け隔てなくコミュニケーションをとっていた。常々、運動をしている時って性別だったり職種だったり、自分が今持ってるラベルと関係なしに距離が縮まるなとひしひしと思っていて。今回それを実現できた場だったと心底思いました。

ジャーナリングに関しても控えめにした方がいいんじゃないかと思って、シェアの時間とかペアになってのワークの時間とかあえて作らなかったんです。でも“もっと話しながらやりたかった”、“みんなの声をききたかった”っていうようなポジティブな答えをいただいた。いまは個人主義の人が多いのかなと思っていたんですけど、やっぱりなにか(つながりを)欲している部分があるし、受け入れる体制を持っているというところに気づかされたリトリートでした」

登山にヨガとジャーナリングを組み合わせ、心と体と自然をつなげるのがこのリトリートの大きな特徴

多くの人が心と体、自然と都市生活のバランスに違和感を感じている中で、〈つながり〉を取り戻すことで心地よい地点を見つける。そうした機会を提供する佐和子さんとMIKAさんのリトリートは年4回、四季折々を楽しめる企画を検討しているそう。早速、9月の終わりには2回目のリトリートが赤岳鉱泉で行われる予定だ。今後の開催情報などはふたりのインスタグラムアカウントで常時発信されるので、ぜひフォローを!

SAWAKO OMURA

MIKA SAITO