ウール 自然からの贈り物

私たちのシグネチャーマテリアルであるメリノウール。その強みや注意するべきところ、何よりも魅力をお伝えします。
  • Text:HERENESS

ウールの歴史はとても古く、初めて毛織物が作られたのは紀元前2,200年頃といわれています。また牧羊の始まりまで遡ると紀元前6,000年頃とも。

私たちのシグネチャーマテリアルであるメリノウールの原種は1300年代に誕生し、中央アジアからギリシャを経てスペインに持ち込まれたとされています。

羊には20にも及ぶ品種がありますが、メリノ種の羊はその毛の柔らかさから貴重なものとされていました。しかし、ただ柔らかい素材というだけで今日に至るまで長く愛されるものでしょうか?

ここではその優れた特徴をお話したいと思います。

 

クリンプが産む断熱効果(冬暖かく、夏は涼しい素材)

メリノウールを語る上で吸湿性、保温性の高さははずせません。

メリノ羊から作られたメリノウールのウェアは熱伝導率が低く、衣類内の温度や湿度を安定させ、快適な着心地をキープします。クリンプ(細かい縮れ)が空気を含み、外気と肌との間で断熱効果を発揮するため、冬は暖かく、夏は涼しい。

ウールというと「冬の素材」という先入観があるかもしれませんが、繊維が細く、薄く、軽量なメリノウールは蒸れを防ぎ、通気性を保ってくれるという側面もあるのです。

メリノウールの繊維表面は人間の毛髪でいうところのキューティクルのように、「スケール」と呼ばれる鱗に覆われています。このスケールの隙間から素早く汗や湿気を吸着、吸った水分を水蒸気として放出すると同時に、体から気化熱を奪い取り、高まった体温を適温に下げる役割を果たします。繊維自体が微かに波打っていることから、糸そのものの中にたくさんの空気を含む能力があり、身体から放出される熱を繊維内に取り込んで保温するというわけです。

例えばランニングをして大量に汗をかいた後も、急激な体温低下を防ぎ、ドライな着心地を保ってくれる、というように。

 

においにくい、それはサステイナビリティに繋がります

身に着けるうえで非常に大切な要素、においにくいのもメリノウールの特徴です。

水分をよく吸ってくれる素材でありながら、なぜかにおいを発しない。繊維内ににおいを閉じ込めるのか、科学的な解明はまだされていませんが、消臭効果が施されたナイロン、ポリエステルなどの繊維と比べてもメリノウールの消臭、脱臭能力は圧倒的に優れています。

例えば普段着として数日間着続けてみると、においが気にならないことに驚くことでしょう。洗濯回数を抑えることができるので、旅先でのワードローブとして役に立ちますし、サステイナビリティにもつながります。

スポーツウェアとしてみた場合、においはストレスになる要素です。メリノウールは私たちのコンセプトの「着心地」の面からも、問題をクリアにしてくれる素材です。

 

自然の魅力を伝え、豊かな感情を抱かせてくれる素材

良いところばかり話しましたが、メリノウールにも注意するべき点はあります。

動物性繊維のため虫に食われやすく、収納する際は防虫剤を使うことが推奨されます。また、縮みやすい性質があるため、洗濯にもある程度の注意が必要です。水をよく吸うため運動中に重さを感じることもあります。

それでも私たちはウールをファーストチョイスにしています。その柔らかな肌触りから、自然の魅力を伝え、豊かな感情を抱かせてくれる、体と心のバランスを良い状態に保ってくれる素材としてこれ以上のものはないからです。